矯正治療について

歯並びを変えるということ

歯並びを変える理由は、大きく3つあります。

1.いわゆる見た目、審美的な問題
2.上下の歯がうまく噛み合わされていない、機能的な問題
3.歯ブラシが届かない、あるいは届きにくいという清掃性の問題

この3つです。
もちろん、見た目を改善できたとしても機能的な問題が残るようでは本末転倒です。
2と3に関しては、結果として必ず改善されなければならない課題となります。

 

いつ始めるべき?

何歳であっても、歯と歯周組織が健康であれば矯正治療は可能です。
しかし、成人すると骨格の変化はほぼ無くなりますので、成長期を利用して骨格とともに歯並びを整える方法がおすすめです。
問題が起きているのであれば、早ければ早いほどいいと言えるでしょう。

 

咬合育成という考え方

歯並びが構成される要因はいくつかあります。
遺伝が30%。あとは成長期の食べ方、話し方、姿勢などで口の周りの頬や舌、口唇といった部分の筋力によって歯が並ぶのです。
そのため、矯正治療も大切ですが、当院では健康な歯並び、噛み合わせを作る姿勢や食べ方、寝方、話し方を育てる「咬合育成」という考え方を大切にしています。

 

歯の矯正治療は子どものうちに

子どもの矯正─咬合育成─

最近、子どもの歯並びが気になるとよく言われます。
確かに検診などで多くの子どもたちを見てみると、ほとんどの子がきちんと並びそうにないように思われます。
そして、テレビなどでも噛み合わせの重要性が議論されるようになり、ますます歯並びを整える必要性が浸透してきているようです。

それでは、いつ治療すればいいのでしょうか?
歯並びを正しく治すことを考えると、歯が生え変わり顎が成長する時期は、歯を抜くことなくきれいで機能的な歯並びを得るチャンスです。
この時期をうまく使わないと、成長が終わってからでは残念ながら歯を抜かないといけなくなる場合が非常に多くなります。
つまり、身体に合ったきれいな歯並びを手に入れるためには、子どもの間に治療する必要があるということです。
そして、「身体に合った」ということを考えた場合、歯だけを見ていてはいけません。

私たちは咬合育成研究会の考えのもとに、歯のみではなく、周囲の筋肉を含めてバランスのとれた歯並び・嚙み合わせを育成することをすすめています。

具体的には
1.哺乳、離乳の進め方を含む食事指導
2.座り方、正しい食事の仕方、姿勢を含む生活習慣指導
3.筋機能訓練(MFT)
4.混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざった状態)矯正
5.永久歯列期矯正

という内容で「よい噛み合わせ」を育てていきます。
当院では、矯正相談(※診療時間外になります)を行っております。お子さまの歯並びで気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

当院で行う矯正治療

ワイヤー矯正

従来からよく知られている方法です。
歯の表面にブラケットという器具をつけて、それをワイヤーの力で動かしていきます。
マウスピースのように外すことができないので、治療のコントロールがしやすいです。一方、清掃性が悪くなるのでむし歯や歯周病のリスクが高くなるため、注意が必要です。

 

マウスピース矯正

マウスピースを入れ替えることで、少しずつ歯を動かすという方法です。
ワイヤーのように目立つことが少なく、人前で話したりする場面で簡単に外すことができるのが利点ですが、その反面、面倒で外しっぱなしにしておくと治療が進まなくなります。

マウスピース矯正について

 

矯正治療の流れ

まず、診査診断です。
なぜ今の歯並びになったのか、どんなところが問題なのかを洗い出し、どんな治療法を使えば改善されるのか、ゴールをどこに設定するのかを決めます。

そのあと、実際に設定した装置を装着して治療開始となります。
治療期間中は1〜2ヶ月に1度来院し、装置のチェックと調整、クリーニングを行います。
場合によって、筋機能訓練が必要になることもあります。

多くのケースでおよそ1年から3年の治療期間を経て終了となり、保定期間という後戻り防止装置をつける期間に入ります。

 

治療期間と費用

治療期間はケースによって違いますので一概に言えませんが、多くのケースで1年半から2年くらいの場合が多いです。

治療費は目的によって異なります。幼児期の正しい成長を促す1期治療なのか、全て永久歯となった2期治療なのか、成長の終わった成人矯正なのか、あるいは部分だけの治療なのかによって変わってきますので、詳細については矯正相談などで個別にお伝えすることになります。

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起こりうる問題点

ミクロン単位では動かせない

私たちの歯はミクロン単位の変化を感じとります。それだけ精密なセンサーがあるということです。
しかし、矯正治療に関してはそこまで精密に動かすことはできません。
ゴルフで言えば、カップインすることはできず、グリーンに乗せるのがゴールになります。あとは人間の柔軟性や適応能力に頼ることになります。
そのため、子どもの時に身体の成長に合わせて治療するのがベストだと言えるのです。

治療後は必ず後戻りする

今の歯並びは、あなたが長年かけて作ったものです。歯の周りの筋肉がそうなるように働いた結果なのです。
だとすると、後戻りするのも当然の結果です。それを避けるために、原因となっている筋肉の働きを改善する訓練が必要であったり、後戻り防止の装置を安定するまで入れる必要があるのです。

後戻り防止装置は一般的に動かした期間の倍の時間必要だと言われています。
つまり、1年かけて動かしたなら、2年間は後戻り防止装置が必要だということです。

 

どうしてキレイに並ばないの?その1

そもそも、なぜ歯並びが悪くなるのでしょうか?
単純に考えると、全部の歯が口の中に生える場所を確保できないということが挙げられます。

例えば、椅子取りゲームを思い出してください。5人分の椅子しかないのに6人が座ろうとすれば、そのうち1人は座れませんよね。これが乱杭歯を作る理由です。つまり、歯が生える顎の骨の成長が足らず、歯を全部並べるスペースが不足してしまうということです。

それでは、なぜそのようなことが起こるのでしょうか?

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まず、なぜ歯の大きさと土台となる骨(歯槽骨)のアンバランスが起こるのでしょうか?
キーワードは歯の周りにある「筋肉」です。
頬の筋肉、唇の筋肉、そして大きな筋肉のかたまりである舌が歯並びを形作っているのです。

とりわけ、顎の骨を拡げるのに活躍しているのが「舌」です。
舌が正しい働きをすることによって、顎の骨はバランスよく成長します。

次に、なぜ歯がその場所に並ぶのかというと、頬と口唇の筋肉と舌との間に並ぶようになっています。
そのバランスが悪いと外側へ倒れて出っ歯になったり、内側に倒れて反対になったりするのです。

そのため、矯正治療を行うには、口の周りの筋肉が正常に働くようにならないといけません。
この点を踏まえておかないと、抜歯しないといけなくなったり、なんとか並んでも後戻りしてしまったり、というようなことが起こります。

 

どうしてキレイに並ばないの?その2

そしてもう一つ、歯並びが悪くなるケースがあります。
それは、上下の顎の位置がずれてしまうケースです。多いのは受け口や出っ歯になるケースですね。

それでは、なぜ受け口になったり、出っ歯になったりするのでしょうか?
もちろん、遺伝の問題はあると思いますが、家族のみんながまったく同じような顔貌になるわけでもありません。小さい時はとても可愛かったのにだんだんと顔が歪んできたというように、出生後の環境により変化していくのです。

それではどのような力が働いているのでしょうか?

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その要素は3つあります。
1つは「噛む力」です。しっかり噛むことなく軟らかいものばかり噛んでいると、バランスが整いません。
また、左右どちらかのみでばかり噛んでるとそちらにずれていく傾向があります。
右腕ばかり使うスポーツをしている人は腕の太さが違いますよね。顎の筋肉も同じなのです。

次に「態癖による力」が挙げられます。
態癖というのは、例えばほおづえやうつぶせで寝ることにより、顎に不自然な力がかかる状態をいいます。
そんなことで変化するのかと不思議に思うかもしれません。
しかし、実際に歯を矯正する場合にかかる力は数十~数百グラムです。
頭の重さが5~6キログラムあることを考えると、歯や顎を変化させるのに十分な力であるのがお分かりいただけるかと思います。

さて、3つ目ですが、これが顎の位置変化に最も影響を与えるといってもいいと思います。それは、地球の力、「重力」です。具体的に言うと、体の”姿勢”です。

例えば、今そのままカチカチと上下の歯を噛み合わせてください。その当たる位置を覚えていただいて、今度は上を向いてカチカチしてみてください。
当たる位置はどこになったでしょうか。通常、当たる位置は奥にずれます。

では、次に下を向いてカチカチしてください。当たる位置は前にずれるのがお分かりかと思います。
そして、その位置をいつも保つような姿勢をとると…。

このように、特に子どもの場合は姿勢によって顎の変位が起こりやすいのです。
いつも猫背で顎を突き出した状態でいると受け口になりますし、スマホを見るために顎を引いていると下顎は後退して相対的に出っ歯になります。

 

筋肉を整えないと治らない。後戻りのメカニズムとは

よく矯正治療したあとに「後戻り」したという話をお聞きになると思います。

これまでに、矯正治療において、口腔周囲筋、さらには全身の筋肉のバランスが重要であることをお伝えしてきましたのでもうお分かりだと思いますが、
口の周りの筋肉が歯並びを作るのに歯だけを並べ替えても筋肉はついていきません。
筋肉が以前の歯並びを作り上げ、その形になじんでいるので、元に戻そうとする力が働きます。
これが「後戻り」が起こるメカニズムなのです。

当院の矯正治療では装置を使うことはもちろんですが、その前に筋肉の使い方やバランスを整える運動をしていただきます。
ただし注意していただきたいのは、咬合育成という方法はおまかせでは治らない、お互いに頑張らないとよい結果が出ないということです。