インプラント治療の不安と疑問
なんとなく不安?
インプラント治療について、漠然と「怖い」とか「痛そう」といった不安を感じ、治療を諦める方が多くいらっしゃいます。そう感じるのも無理はないですよね。
確かにインプラント治療には、危険な場合や将来よくない結果が起こる可能性があるのは事実です。しかし、同時に素晴らしい夢の治療でもあるのです。
雑誌やテレビで取り上げられた一部の情報を見聞きして不安になるのではなく、まずは正しく知っていただきたいと思います。
「先が見えない」「どうなるかわからない」から不安になるので、医学的な正しい情報を得るだけでも随分感覚が変化するようです。
インプラント治療は痛い?
インプラント手術では、歯ぐきの下にある骨に穴をあけて、人工の歯根を埋め込みます。
その際、その他の治療と同じく、麻酔を行いますので、基本的には痛みを感じることは少ないと言えます。
「少ない」というのは、例えば歯を抜く時や歯を削る時に麻酔をして、麻酔が効きづらいとか切れてきた経験があるかと思いますが、それと同じことです。
もちろん、その場合は麻酔を追加することで対処します。
術後の痛みに関しては、それぞれの状況によって異なります。翌日にはケロッとしている方もいれば、数日腫れと痛みが生じる方もいらっしゃいます。こちらは痛み止めを使ってコントロールしていただくことになります。
どちらにしても術中・術後の痛みに関しては、歯を抜く時と同じくらいとお考えいただけたらと思います。
自分の骨に穴をあけるなんて、怖い!
「骨に穴を開けて、人工の歯根を埋める」そう聞いただけで、何となく怖いですよね。
でも、実際のところはどうなんでしょうか?
実はボロボロになった歯を抜く時の方が大変なこともあります。
なぜなら、そういう歯は細菌だらけで、場合によっては骨と癒着しているケースもあります。そのような時は骨を削ることもあり、インプラントより危険とも言えるのです。
もちろん、インプラントでも難しいケースでは侵襲が大きくなります。どのような場合が危険で、何が問題なのかご説明しましょう。
インプラント治療の危険性
実際のインプラント治療で問題になること、気をつけるべきことを知ることで不安の原因を探っていきましょう。
・何が問題なのか?
インプラント治療の問題は「異物を生体内に加える」というところです。つまり、免疫と細菌感染の問題と解剖学の問題があります。
そして、それは手術時・術後すぐ・術後数年後の3つの段階で問題となります。
細菌感染
術中・術後の細菌感染はインプラントの失敗を招きます。さらには全身的な菌血症を招く恐れもあります。
だからこそ、手術には普通の治療よりも感染予防対策を徹底しています。術後も抗生剤を飲んでいただいたり、消毒に通っていただいたりと、細心の注意を払います。
術後数年後の細菌感染は天然歯の歯周病と同じで、インプラントの周囲が不潔だったことにより、周りの骨が吸収されます。これをインプラント周囲炎といい、腫れたり、膿が出たり、最悪の場合インプラントを除去しないといけなくなることもあります。
解剖学の話
これは主に手術中の問題です。雑誌やテレビで報道されたインプラント治療の死亡例は、この解剖学的な問題からなります。
つまり、穴をあける際にドリルが骨の外に突き出して大事な血管や神経を傷つけたケースです。
これは、CTを撮影して確認し、さらにサージカルガイド(ドリルの方向を決める器具)を使うことで避けることができます。
インプラント治療の失敗
インプラント治療の失敗というのは、以下の3つがあります。
1.術中の失敗
2.術後の失敗
3.術後3ヶ月後の失敗
・術中の失敗
術前にCTなどである程度状況は把握できますが、実際の状況は手術を行って初めて分かるものです。
かなり難しいケースの場合は、手技が1mmずれたら残念ながらインプラントができなくなるケースもあります。
ただし、現在ではCTとサージカルガイドという装置を使うことで、そのようなケースも減少しました。
・術後の失敗
残念ながら、術後に傷が細菌感染を起こしてインプラントが付着しない場合があります。
これは、術前に口腔内の細菌コントロールができていなかった場合や、糖尿病など感染しやすい全身疾患、術後に抗生物質を飲まなかった場合など、術後の感染対策が不十分だった場合に起こりやすくなります。
逆に言えば、口腔内が清潔で、身体が健康で、術後のルールをちゃんと守れば、問題が起きる可能性はぐんと下がります。
・術後3ヶ月後の失敗
なんらかの問題によって、インプラントが3ヶ月経っても骨に付着しないケースがあります。
免疫の問題や骨の再生の問題だと思われますが、インプラントの種類や大きさを変えて埋め直すことにより、改善することがほとんどです。
・十数年後に問題になるケース
これは失敗とは言い難いのですが、インプラント周囲炎を起こして、痛みや晴れに悩まされるケースと、ご自身の歯が病気で無くなっていって、残ったインプラントが邪魔になってしまうケースが考えられます。前者の場合、炎症の治療を行うか、インプラントを除去することになります。後者の場合は、炎症がなければ上部構造をはずすことで解決することもあります。
どちらも避けるためには、ホームケアとメンテナンスが重要になります。
インプラント手術が難しいケースとは?
インプラントは骨に埋めるので、骨の状態によって難易度が変わります。
インプラントの大きさは太さが3~6mm、長さが6~13mm程度です。
つまり、インプラントを埋めるために骨の厚みがない場合と、骨の高さがない場合などが手術が難しいケースです。
その場合、骨を人工的に作る特殊な方法を用いて手術を行うことになります。
例えば、サイナスリフト、ソケットリフト、リッジオーギュメントなどと呼ばれる方法があります。
その際に、歯科医師がどれだけの引き出しを持っているか、経験を積んでいるかが大切です。術式によっては、かなりトレーニングを積まないとできないものもあります。
当院長はインプラント治療について多くを学び、長年にわたって多数のインプラント治療を行ってまいりました。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。